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[2013/11/25 (MON)] 今年の本屋大賞 百田尚樹さん「永遠の0」 映画公開 間近!

 

 

~未来の日本へ希望を託す特攻隊員、魂の真実~
 

冒頭から海面を低空飛行しながら、瞬く間に飛び去っていくゼロ戦に圧倒される。宮崎駿監督の『風立ちぬ』では、ゼロ戦を設計した堀越二郎がモデルになり、そこには「生き抜く」というテーマが内在していた。本作はそのゼロ戦で実際に戦争を闘った特攻隊員の生き様を、生き残った者が証言することによって現在に蘇らせる。そこにも「生きて帰る」という強い願いが、死の淵を彷徨う特攻隊員たちを真の窮地から救ったのだ。

祖母の葬儀の場で、はじめて実の祖父、宮部久蔵(岡田准一)がいることを明かされた健太郎(三浦春馬)。フリーライターの姉(吹石一恵)の取材に同行して、宮部の生前を知る戦時中の知人たちを訪ねる。すると、皆「宮部は海軍一の臆病者」と、飛行技術の腕は一級ながら実戦で戦おうとしない宮部のことを揶揄する言葉ばかりが出てくる。意気消沈する健太郎たちの前に、がんで余命わずかの重病人の井崎(橋爪功)が、宮部の言葉で自分は救われたと、宮部のエピソードや祖母(井上真央)についても話しはじめる。

フィクションではあるが戦争を知らない世代に対する遺言のような形で、戦争を生き抜いた同僚や教え子たちを演じた名優たちが戦争当時の状況を語り始める。特に宮部に嫌悪感を抱いていた景浦役の新井浩文と、訪れてきた健太郎にエピソードを語る現代の景浦役の田中泯の迫力は凄まじい。真珠湾攻撃からはじまり、日本が繰り広げた空中戦の数々や精巧に再現されたゼロ戦とその飛行ぶりの迫力に圧倒される。ゼロ戦の操縦室はたった一人の空間だ。戦局に一喜一憂し、また機械の不具合や燃料切れに唖然とし、誰にも助けてもらうことができず海へ墜落していく。そこから生き残るかどうかは時の運だ。正確に言えば、敵にツッコめば100%死ぬが、海へ墜落したら生きて帰る望みは残っている。「生き残りたい」と願うことが許されなかった時代に、家族のために生きて帰ることを公言した宮部の真意は、次第に周りを変えていく。

健太郎が祖父宮部のことを知れば知るほど、「なぜ特攻隊に志願し、生きて帰ってくることができなかったのか」という疑問が残る。その疑問が解けるとき、健太郎は実の祖父の血が流れていることを誇りに思うのだ。誰にでも公平で、自分の意思を強く持ち、責任感はあるが押しつけがましくない。そんな宮部を演じる岡田准一の誠意と、養成した特攻隊員が次々死んでいくのに何もできない無力さの表現が見事。間違いなく岡田准一の代表作となるだろう。

宮部が日本の未来のために生き残ってもらいたいと願った人たちは、生き残った者の責務として宮部の想いを語り継ぐ。そうやって、過去から未来へ、未来から過去へ思いをつなぐことで、人類は同じ間違いを犯すことなく、少しずつ前へ進んでいけるのだ。過去に学ぶことの大切さを思い知る特攻隊員秘話。闘わないことより、生きるのを放棄することの方が臆病なのだ。(江口由美)

公式サイト⇒http://www.eienno-zero.jp/
(C) 2013「永遠の0」製作委員会

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